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逆転勝ちし、喜ぶ国士舘の吉村久惺=2025年7月25日午後2時51分、神宮、野田枝里子撮影

(25日、第107回全国高校野球選手権西東京大会準々決勝 国士舘4―3早稲田実)

 高校野球は最後まで何が起きるかわからない。応援団長しか許されない赤いはちまきを巻いた国士舘の吉村久惺(3年)は一塁側スタンドから、祈るように見守った。大丈夫、俺たちがついている――。

 6月。夏の大会のメンバー発表で、名前は呼ばれなかった。一週間後、毎年恒例の足立学園との「引退試合」。途中出場して、投手と右翼を守った。打てなかったけど、両親の前で楽しんでいる姿は見せることができた。「燃え尽きたというか、これで野球は一区切りかな」。自ら手を挙げて、応援団長になった。

 甲子園にいくために、国士舘に来た。1年夏は3回戦、2年夏は4回戦で敗退。今大会は3年間で初めて神宮に来ることができた。同じクラスでレギュラーの高橋幸助からは、「ここまできたら、最後までいってやる」って、力強い言葉をもらった。最初は未練もあったけど、試合ごとにたくましくなる仲間を見て、そんな思いは消えた。「すごい試合を続けてやってくれた。かっこよくて、こいつらなら、応援したくなる」

 九回表に逆転する劇的な勝利。試合後は、うれしくて、スタンドにいるみんなと抱き合って喜んだ。汗か涙かわからないくらい、顔はぐしゃぐしゃ。「うれしくて、誇らしくて。メンバー外れて悔しかったけど、こいつらに負けたなら、しょうがない」

 次の試合もまた、神宮で応援できる。3年間で一番長い夏。まだ、終わって欲しくない。=神宮

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